こんにちは、研究開発部のTRです。
本記事では、無電解CoWBめっきによりバリア層形成を行い、電解Cuめっきによるコンフォーマルな配線形成により、低コストなTSV形成技術を実現させる、弊社めっき技術開発のお話をさせていただこうと思います。
TSV加工コストの大幅な低減が可能に
現在我々の業界では、低コストで実現できるTSV形成技術、代替技術の開発が盛んに行われておりますが、今後、様々なセンサモジュールや無線通信モジュール、シリコンフォトニクスなど異種デバイスを3次元に集積したIoTデバイスへの応用が期待されています。
その中でも、チップとチップの接続を、プリント基板を介さず、配線の微細化と配線長の短縮により性能向上を図ることを目的としたシリコンインターポーザー(2.5D実装)がより多くの製品分野に適用されていくと予想されます。
その代表例として、次のような用途があると我々は考えています。
1.高性能な大型積層センサ
センサとLSIを3次元積層し、LSIを形成したウエハの裏面側からTSVを形成し(バックサイド・ビアラストプロセス)、裏面から電極を取り出すことで、チップ面積を小さくすると同時に複数のチップを並べることで高集積化を図る。
2.シリコンインターポーザ―
シリコンウエハ上にRDL(再配線層)やインダクタ(コイル)などIPD(集積型受動部品)を形成し、センサ、RFモジュールやシリコンフォトニクスモジュールなど異種デバイスを集積させた、無線通信や光通信にも対応した異種デバイスを接続する。
高アスペクト比TSVに安価に均一な成膜ができる無電解めっき
現在、TSVウエハ加工は12インチウエハ用途の製造装置による生産ライン構築が前提となっており、多額の投資コストがかかるため、海外の大手半導体メーカーに限られています。
一方、日本では、パワー、ディスクリートなどアナログデバイス、センサ、高周波フィルターなど、8インチ以下の半導体生産ラインが数多く稼働しています。
このような既存の半導体工場を活用して、低コストでTSV加工が可能になれば、異種デバイスの集積化が容易となり、より高付加価値な製品を生産できます。
ここで、大きなサイズかつ高アスペクト比のTSVのメリットとデメリットはそれぞれどのようなものなのでしょうか。
<メリット>
ウエハの薄化量を少なくできる
ウエハをそのまま搬送でき、支持基板の仮貼り合わせ、剥離工程が不要になる
<デメリット>
ドライエッチング装置による深堀エッチングに時間がかかる
スパッタリング装置による膜厚均一性に優れたバリア層、シード層形成が困難
銅のビアフィリングめっきに時間がかかる
このような最先端の分野において、弊社のめっき技術・装置技術を応用できないかと考え、研究開発に取り組んでおります。以下にご紹介する研究開発プロジェクトでは、無電解CoWBめっきによりバリア層形成を行い、電解Cuめっきによるコンフォーマルな配線形成により、低コストなTSV形成技術の実現を目指しました。
8インチ極深孔TSVウエハへの無電解バリアシードめっき膜の開発
弊社では、科学技術振興機構(JST)が提供する研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)シーズ育成タイプで平成30年度に採択された開発テーマ「プロセスコストを極限まで下げた高スループット三次元積層型IC向け貫通配線(TSV)形成技術」において、8インチウエハに形成したビア径Φ20μm、深さ250μmのTSVに、無電解めっきおよび電解めっきによりCoWBバリア層、Cu配線層を形成に成功しました。1,200段のデイジーチェーンを作製し電気特性を評価しました。
以下にΦ20x250μmのビアを形成した8インチウエハに、無電解めっきによるバリア層、電解めっきによるシード層を形成した断面SEM画像を示します。
この8インチウエハ全面に対して、均一にTSVの底部までCoWB膜(膜厚約100nm)とCu膜(膜厚底部100nm~表面1μm)の連続膜の形成に成功しました。
Cu拡散バリア性についてもサンプルの熱処理後にSIMS分析を行い、バリア膜として一般的に使われているタンタル(Ta)と同等のバリア性能を有していることを確認しています。
更には、電気抵抗測定およびストレステストによる電気特性評価の結果、配線として使用できるレベルであることが確認できました。
8インチウエハ用無電解めっき装置によるTSV、微細配線めっき試作を承ります!
弊社の研究開発部が運営する社内ラボでは、TSV試作に対応可能な無電解めっき、電解めっき装置を常設しています。電子デバイスメーカーのお客様の新製品開発において、TSV配線の試作のご要望がございましたらお気軽にご相談ください。
最後に
いかがでしたか?
TSV配線の試作のご要望をお持ちの方は弊社の研究開発スタッフが、ビーカーワーク実験、条件出し、ウエハサイズでの試作のお手伝いをさせていただき、得られた結果を基に、最適なめっきプロセスと生産装置の仕様をご提案いたします!
東設に興味を持っていただいた方はこちらから。
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