こんにちは、研究開発部のTRです。
本記事では、基板材料間の熱膨張係数のミスマッチにより、熱処理工程で不具合が発生しやすい銅めっき配線の熱膨張を抑える銅めっき液の技術開発についてのお話をさせていただこうと思います。
熱膨張係数のミスマッチによる品質リスクが高い銅めっき
電子デバイス製品の設計、製造プロセスの検討においては、製品に使われる電子材料の熱膨張の影響が考慮されています。製造工程および使用環境における温度変化が、製品の特性や品質に大きな影響を与えるためです。
電子デバイスに用いられる多くの配線は、銅めっきで形成されています。銅の線膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)は17ppm/Kであるのに対し、シリコンのCTEは3ppm/Kと小さく、逆に絶縁材料は樹脂であるため、配線材料に使われる金属よりも一般的に大きな熱膨張係数を示します。そのため、プリント基板に使われるガラスエポキシ基板では、ガラスクロスやアルミナなどの無機材料を混合させることで熱膨張が抑えられており、ポリイミドフィルム等においても低線膨張特性を持つ材料が開発されています。
その一方で、銅めっき配線の熱膨張係数を制御する取り組みは、これまでのところ進んでいませんでした。
銅めっき配線形成後の熱処理工程で、熱膨張による内部応力が集中する箇所で配線の亀裂や断線、剥がれが起きたり、配線の位置ずれを起こしたり、基板全体の反りによりロボット搬送でトラブルが発生するなどの不具合が発生します。そのような不具合発生を回避させるために設計や工程を工夫する必要があり、コストアップ要因にもなります。
また、製品の使用環境においても、要求寿命を満たすだけの接続信頼性を確保する必要がありますが、過酷な使用環境下においては、製品に使われる材料間の熱膨張係数のミスマッチにより品質不良を引き起こすリスクを抱えることになります。
銅よりも熱膨張係数の小さい金属材料の代用課題
通常の銅めっき配線で、熱膨張によるリスク対策が困難な場合、銅よりも熱膨張係数の小さいニッケルなどの金属材料を代わりに使ったり、タングステンやモリブデンとの線膨張係数の小さい金属との合金を用いたりする場合もありますが、電気抵抗が高くなる、熱伝導率が下がる、高コストになる、といったデメリットがあることで、本来の製品特性を引き出せなくなるなどの結果につながりかねません。
やはり配線材料としては、銀の次に電気抵抗率が低い銅の特性をそのまま活かして、従来同様のめっきプロセスにより低線膨張を示す銅配線形成を行うことができたら、製造プロセスの大幅な変更が不要となり、低コストで実現できるため、大きなメリットがあると考えられます。
低熱膨張銅めっき液の実用化へ ー 東設の取り組み
これまでの課題を課題を解決するために、大阪府立大学の近藤和夫教授(現 ㈱微小めっき研究所 代表取締役社長)が、特殊な添加剤を添加することにより低線膨張を発現する画期的な銅めっき液を発明しました。
弊社は、経済産業省の平成29年度採択サポイン(サポーティングインダストリー)事業を通じて、㈱微小めっき研究所の低線膨張銅めっき液の実用化に必要とされるめっき装置の開発に協力しています。
㈱微小めっき研究所のホームぺージはこちらですので、興味のある方は是非!
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今後の課題
5G通信規格に対応した電子デバイスや、高温動作が要求される炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(GaO)など次世代パワー半導体においては、これまで以上に過酷な動作温度条件が要求されており、シリコンや化合物基板材料と、電極材料の熱膨張係数の差を可能な限り小さくすることが求められます。
またスマートフォンで採用された先端パッケージング法であるファンアウト・ウエハレベルパッケージ(FO-WLP)から、さらにその技術を大型基板に適用したファンアウト・パネルレベルパッケージ(FO-PLP)が開発されていますが、これらの用途においても、銅めっき配線形成後の熱処理工程で、材料間の熱膨張係数の違いにより生じる基板の反りや配線の位置ずれへの影響を最小限にすることが求められます。
最後に
いかがでしたか?
様々な電子デバイス製品およびパッケージングの製造工程上の歩留まりや、製品の長期信頼性において、低熱膨張銅めっきを適用することで改善につながる可能性があります。
東設では、このような新しい技術に対応できる装置開発にも取り組んでいます!
東設に興味を持っていただいた方はこちらから。
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